インド水塔の大規模改修工事が完了―建設当初の美しさが蘇る―
横浜市中区山下公園にある「インド水塔」は、知る人ぞ知るインドと横浜との歴史的な繋がりを示すモニュメントです。
横浜とインドの交易は、開港後の19世紀から始まり、インドから移住してきた大勢のインド商人は山下町に商館を構え絹織物の輸出などを行っていました。
1923年9月1日に発生した関東大震災で、横浜の市街地は壊滅的な被害を受けました。横浜在住のインド人116人も被災し、28人が犠牲となりました。
1930年、震災の瓦礫処分場として埋め立てられた場所に、山下公園が開園しました。被災した多くのインド人に住宅の手当て等横浜市民が手を差し延べたことへのお礼と、同胞への鎮魂の意味を込めて、1939年12月に横浜のインド人コミュニティが資金を調達して山下公園内に建立し、横浜市に寄贈したのがインド水塔です。
建築様式は、イスラム寺院の中庭にあるハウズ(泉亭)のような珍しいスタイルで、イスラム風、インド風、日本風が混在した石造りの個性的なデザインとなっています。ドーム天井にはカラフルなモザイクタイルが多数ちりばめてあります。
竣工から84年が経ちますが、これまで大きな改修工事はされたことがありませんでしたが、屋根の銅板のつなぎ目から雨漏りがしたり、天井の漆喰も部分的に欠けたりするなど劣化が著しく、老朽化が目立つようになっていました。加えて2019年秋の大型台風で屋根銅板の一部が欠落しました。
そのため、2022年秋から2023年3月まで、横浜市により大規模改修工事が行われ、このたび完了しました。
今回の改修工事では、①屋根のドームはモルタル下地から全面改修。これにより以前は緑青色だった屋根は、銅本来の色に戻りました。②屋根の防水塗装のし直し、③天井と内壁は石膏彫刻下地材から全面改修、④外壁は石目地を全面補修、⑤天井から吊り下げてある照明灯の修理、⑥周囲の植栽は、インドのナショナルカラーを模した植え込みになりました。
本来は山下公園の水飲み場ですが、現在は衛生上の問題から水は飲めず、モニュメントとして保存されています。
毎年9月1日には、横浜ムンバイ友好委員会、横浜インドセンター等が中心となって、インド水塔の場所で慰霊祭を開いてまいりましたが、今後は美しさを取り戻したインド水塔において慰霊祭を行います。
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